2017年02月22日
社会・生活
企画室
新井 大輔
先日、日本銀行の貨幣博物館を訪れる機会があった。古代から現代に至るまでの様々な貨幣やお金に関する絵画、道具等が展示されており、お金の歴史や役割を学ぶことができる。
平日の昼時にも関わらず、修学旅行中と思われる学生や、買い物ついでなのか初老のご夫婦など多くの見学者でにぎわっていた。日本最古の鋳造貨幣として知られる「和同開珎」や中国からの渡来銭など教科書で見た覚えのある貨幣や、刀の形をした刀銭、貝殻を用いた貝貨など初めて見るものも多く大変興味深かった。
原始の経済活動は物々交換から始まる。次に交換の仲立ちをするものとして、生活必需品の米、布、塩などの物品貨幣が使用されるようになり、その後、金属貨幣、紙幣へと発展していくのが一般的だ。ところが、展示を見ながら貨幣の歴史をたどっていくと、日本の貨幣史にはイレギュラーがあったことが分かった。
日本で金属貨幣が発行されるようになったのは7世紀後半。奈良時代には和同開珎などの銅銭が使用されていたが、銅の産出量が次第に減少し、銅銭は小さく粗悪になり、貨幣としての信頼を失い、ほとんど使用されなくなった。そのため、平安時代中期の10世紀半ばから200年程の間、米や絹といった物品貨幣が貨幣の主役に返り咲くこととなった。貨幣経済が後退した時期があったのだ。
その後、戦国時代には戦費調達のために金貨・銀貨が鋳造されるようになり、江戸時代に入ると紙幣も流通するようになった。貨幣経済が成熟期に達した現代、電子決済や電子マネーが日常的に使われるようになり、その気になれば現金なしでも1日を過ごせる。
そんな中、職場内の懇親ボーリング大会で、束の間、原始に立ち返る試みをしてみた。幹事役を務めることになった筆者は、何とか会費を安く抑えようと、家庭に使わずに眠っている不用品を参加者に持ち寄ってもらい、賞品として活用することにしたのだ。一種の「物々交換」だ。タオルやペン、食品、飲料、健康グッズとバラエティに富む品物が集まった。中には有名ブランド品もあり、不用品とは思えない豪華さだ。
この「物々交換」企画、当初は「がらくたを持ち寄ってどうするの?」と不満の声もあったのだが、事前の下馬評を覆し、なかなかに盛り上がった。何をもらえるかわからないワクワク感や想像以上の豪華な景品の数々に、参加者のテンションは大いに上がっていた。かく言う筆者は有名ブランドの蜂蜜を獲得、毎朝トーストに塗っておいしく頂いている。
貨幣がデジタル化しつつある今の時代だからこそ、「物々交換」には何とも言えない懐かしさや温もりがある。読者の皆様もスポーツ大会などのイベントを企画することがあれば、一度試してみてはいかがだろうか。会費を割安に出来る上、何より思わぬ掘り出し物に出会えるかもしれない。
日本銀行・貨幣博物館(東京都・中央区)
貨幣博物館:入館無料、月曜休館 http://www.imes.boj.or.jp/cm/
(写真)筆者
新井 大輔